ブラック企業のニュースからパワハラやセクハラなど、自分の立場を利用して相手を攻撃するハラスメント=嫌がらせ・いじめが注目されるようになりました。
パワハラ、パワー・ハラスメントは職場でのいじめ行為です。
ただ「相手を圧迫する」嫌がらせやいじめについては、職場内でのこととして、長く問題提起されないままでした。
そのため、
- 「上司にこんなに怒られるのは、自分が仕事ができないからだ」
- 「自分は役立たずだから仕事をさせてもらえないんだ」
- 「仕事ができない自分には、こんな仕事をさせてもらえるだけでもいいと思わなければ…」
と、パワハラを受けている被害者の方が自分を責め、泣き寝入りしてしまうことがほとんどです。
パワハラはあってはならない行為ですが、我慢しているうちに体調を崩し、うつ病などの精神疾患から休職、退職せざるを得ない状況に追い込まれる人もいます。
さらに上司から「辞めてしまえ」と退職を迫られ、自己都合退職で自分に不利な条件で辞めざるを得ないという人も。
これも立派なパワハラなのですが、それに気がつかないままでいると、転職してもまた同じような状況に追い込まれる可能性もあるんですよね。
パワハラに関する知識を持っていなければ、自分を守れません。
ここでは、「上司のパワハラが酷く辞めたい!」と決意した時に、すぐしておくべき対策を詳しくご紹介します。
[リードランキング]目次
上司だけじゃない!知っておきたいパワハラの定義と具体例

パワハラは、「職場で優位な立場にいる人が、自分より劣位な立場の人に対して、精神的もしくは身体的な苦痛を与える行為」のことをいいます。
ただし、同じ行為を受けてもそれに対してどう感じるのかは人によって違うため、パワハラを受けていると訴えても「考えすぎ」といわれることも少なくありません。
ただパワハラを受けることでうつ病になったり、悪化して心的外傷後ストレス障害、一般的な呼び方ではPTSDを発症し、長く後遺症に苦しむ人もいます。
そういった被害を広げないためにも、「パワハラを受けている」と声を上げる必要があるのです。そこでパワハラとは一体どんな行為なのかを、詳しく見ていきましょう。
パワハラの意味と定義を知っておこう
厚生労働省が、平成24年1月に報告した「職場でのいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告書」において、パワハラは以下のように定義されています。
「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」
参考記事:職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議について~厚生労働省~
パワハラの行為は、大きく分けて6つに分類されています。
1.身体的なもの | 殴る蹴るなどの暴力行為、ものを投げつけるなど |
2.精神的なもの | 怒鳴るなどの暴言、脅迫、侮辱、相手の名誉を傷つける言動 |
3.人間関係 | 仲間はずれにする、無視をする、隔離して仕事をさせる |
4.過大な要求をする | 明らかに能力を超えた仕事の強要をする |
5.過小な要求をする | 能力や経験に見合わない作業をさせる、仕事をさせない |
6.個を侵害する行為 | プライベートなことを聞こうとする、立ち入ろうとする |
参考記事:職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議について~厚生労働省~
パワハラは、業務上必要な行為である指導や命令、また指示といった行為に伴って起きることが多く、加害者側はそれがパワハラであることに気がつかないで繰り返していることがほとんどです。
さらに被害者の方も、その行為に逆らったら自分の立場が悪くなることを恐れ、パワハラを受け入れてしまうことからなかなか解決に至らないのが現状となっていますね。
パワハラは上司→部下だけでなくいろんな立場から起きるもの
パワハラは職場内で優位な立場にある、いわゆる上司や社長といった「逆らえない人」から受ける行為です。
ただ先にも挙げた「優位性」については、上司から部下だけではなく、先輩や後輩といった関係、同僚の間でも発生します。
さらに、部下から上司に向けてのパワハラもある、ということも忘れてはいけません。
- 上司なんだから何とかしてくださいよ
- これぐらい社長なら当たり前ですよね
と、相手が上司であっても、何度も繰り返し圧迫したり脅迫をする行為はパワハラにあたります。
会社内の人間関係によって起きるパワハラは、誰もが加害者、被害者になる可能性があるということを忘れてはいけません。
どんなことがパワハラにあたるの?具体例で見てみよう
パワハラはセクハラのように、被害を受けた人が不快に感じるか否かだけでなく、周囲の人がその行為を不快に感じる、職場環境が乱されているといったことも判断基準となります。
「自分が仕事ができないから」と思い込むのではなく、こんなことをされていたらパワハラかもしれない、という具体例を見ていきましょう。
- 他の社員もいる前で「無能」「仕事ができない」と叱咤された
- 蹴られたり殴られたりした
- 他の人とは明らかに違う量の仕事をさせられる
- 他の人よりも少ない仕事しかさせてもらえない
- 休みを取ろうとすると理由を聞かれ、話さないと休ませてもらえない
- 机の中を物色されたり、スマホの中を勝手に見られた
- 挨拶をしてもみんなに無視される
- 一人だけ部屋の隅の席に追いやられる
- 会議に参加させてもらえない
- 何時間も立たされて叱咤される
また、「いうことを聞かないと辞めさせるぞ」といった言動もパワハラです。
一緒に働いている同僚と、あからさまに違う待遇を受けているのであれば、パワハラではないか?と疑ってみましょう。
上司のパワハラが酷くて辞めたい!そう考える前にすべき6つの対策

上司に毎日呼び出されて嫌味をいわれる、机を拳で殴るなど、精神的な圧迫を受けるパワハラ。
このままでは病気になってしまう!と、まず退職を考えてしまうのではないでしょうか。
ただしいきなり退職してしまったら、明日からどう生活すればいいんだろうということにもなりかねません。
そこで、退職する前にすべきこと、できることについて詳しくご紹介します。
1.パワハラを受けたらまず記録をしよう
パワハラをする人は自分の行動が正しいと思っているので、こちらから異議を申し立ててもまず話し合いにはなりません。
今後辞めるにしても、労災を申請したりする際にも、証拠が必要となるのでその記録を取ることを優先しましょう。
可能であれば会話を録音する、難しければパワハラを受けた日時・場所・言われたことやされたことを細かくノートに記録します。
その時の自分の気持ちも合わせて記録しておくといいでしょう。
さらにメールやLINEなどでパワハラを受けた時には、その記録を印刷、もしくはプリントスクリーンなどキャプチャしておくのもおすすめです。
相手から渡されたメモ書きに、圧迫するような言動や指示があるなら、これも重要な証拠になります。
暴力行為を受けて病院に行った場合、またうつの症状で病院に行った場合などは、通院記録や診断書も記録・保存しておきましょう。
2.異動届を出してみる
パワハラの加害者が上司だけで、他の人とは通常通り仕事ができているのであれば、異動届を出す方法もあります。
この場合、パワハラということを理由にすると加害者を逆に刺激することにもなるので、他の理由を挙げて異動願いを出すといいでしょう。
ただし標的であるあなたがいなくなった場合、パワハラのターゲットが他に移る可能性もあるため、できれば社内のパワハラ対策窓口も併せて利用することをおすすめします。
3.パワハラを受けている上司より上の人や社長に相談する
パワハラをしている上司の中には、下には厳しくしても自分より上の立場の人間には、態度を変えて下手に出るといった人もいますよね。
そういった場合には、パワハラの加害者より強い立場の人に相談することも考えましょう。
会社は、働いている社員を守る義務があります。
泣き寝入りせず具体的な証拠を合わせて見せれば、きっと対処してくれるはずですよ。
4.パワハラを相談できる窓口に相談しよう
会社によっては、パワハラなどハラスメントの相談を受け付ける窓口を設置していることがあります。まずは、そこで相談する方法も考えましょう。
ただし内部の人間が対応をするため、相談しても話を聞いてくれない、もしくはパワハラをしている上司と個人的つながりがあり、事案を握りつぶされるといったこともないわけではありません。
この場合や、会社内で知られたくない場合は、外部の相談窓口に相談してみましょう。
ネットで受付をしているところもあります。
パワハラかどうか判断できない場合にも、第三者の目で見てもらうことは必要ですよ。
5.パワハラを受けていることを周囲の人に言わないようにしよう
パワハラで悩んでいる場合、家族や友人などに相談するのはいいのですが、会社内で周りの人に相談するのはやめておきましょう。
自分で感じたことであっても、人が聞いてまた別の人に話をした場合には、微妙に内容が変わってねじれてしまうことはよくあります。
公正な立場で判断してもらうことが解決につながるということを念頭において、慎重な行動が必要です。
また「そんなのパワハラじゃないよ」といわれた場合、自分で我慢するということになってしまうと、いつまでも解決しないままになってしまいますので、相談する相手は選びましょうね。
6.可能であれば休職する
精神的、身体的に限界になる前に休職をするのも対策の一つです。
休職した後、また復帰することを考えると辛いかもしれませんが、単に休職して静養するだけでなく、この間に転職活動をする方法もあります。
さらに休職は有休消化と違い、会社でその理由を調べることになるんですよ。
この時にパワハラのことを申し出れば現状を変えることも可能なので、思い切って休むことも考えましょう。
退職の強要もパワハラになる!転職する時に注意したいこと

- 「お前なんか辞めちまえ!」
- 「辞めてもらえないと迷惑なんですよ」
こういった退職をそそのかす行為も、パワハラにあたります。
ただ、それに気がつかずいわれるまま退職してしまうと、あなたの将来が不利になるだけなんですよね。
そこで、辞める場合にあなたがすべきことについて、詳しくご紹介します。
退職届は「会社都合」にする
パワハラを証明する材料がきちんとあるのであれば、会社都合で退職届を出しましょう。
ただし、会社によってはパワハラを理由として認めない、もしくは自己都合退職にしないと届を受理しないといったことを言ってくる可能性も。
この場合は、内容証明で退職届を提出するという方法があります。
提出から14日で退職は可能ですが、出社しづらくなることも考えられますよね。
どうしても会社都合が認められない場合は、次の方法も試してみましょう。
自己都合退職でもハローワークで異議申し立てができる
自己都合退職しか認めてもらえなかった場合、そこで泣き寝入りする必要はありません。
ハローワークに提出する離職票に、「離職理由に意義があるかどうか」を確認する項目がありますので、ここで異議ありと申し立てが可能です。
併せて、パワハラを受けた証拠も必要となります。
パワハラを受けていたことが事実だと認められることが大前提なので、証拠はきちんと整理しておきましょう。
退職の強要もパワハラになる
パワハラというと、怒鳴ったり叩かれたり、といった直接的な攻撃に目が向きがちですが、「穏便に解決したいから退職してもらえませんか」といった強要もパワハラになります。
こういったことを言われた場合、証拠とできるようメールもしくは文書などを保存しておきましょう。
特にパワハラを受けている場合は、冷静な判断ができなくなっていることが多いので、自分の意志ではなく無理矢理辞めさせられそうになった場合は、即座に返事をしないこと、そして一度冷静になることも必要ですよ。
パワハラが改善されないなら早めに転職を考える
相談窓口に相談したとしても、加害者が長く会社に勤務しているなど強い立場にいる場合は、なかなか解決が難しいのが現状です。
ただしパワハラを理不尽に受け続けても、あなたのことを守ってくれない会社に義理を果たす理由はありません。
また、パワハラを積極的に解決しようとしない会社が、今後どうなるかは明らかです。
友達の話ですが、毎回仕事のたびきつい言葉で叱咤され、体調を崩してしまいました。
当時はまだパワハラという言葉もなく、友達も自分が受けていることがパワハラだと気がついたのは退職した後だったとか。
それでも友達が退職した後、数年でその会社は潰れてしまったそうです。
つまり、パワハラを放っておくような会社には未来はないってことですよね。
自分を責めるのではなく、勇気を出して辞めることもあなたの将来のためですよ。
【まとめ】パワハラと戦うよりも転職して自分を守ろう

パワハラを受けた場合、相手や会社に損害賠償を求める裁判を起こすことは可能ですが、いくら証拠があっても裁判で勝訴するのは難しいとされています。
ただし、裁判はあくまでも最後の手段です。
裁判に時間をかけるよりも、パワハラの被害をこれ以上受けないために転職をして自分の身を守ることを最優先に考えましょう。
ハラスメントをなくすため、積極的に窓口設置やカウンセラーを採用している会社は増えてきています。
そういった社員のことを考えている会社に転職すれば、あなたも気持ちよく仕事ができ、会社もいい人材が採用できてWin-Win(どちらにも利益があること)ですよね。
パワハラと戦うのはかなり難しいので、もうこれ以上耐えられない!と思ったら、違う会社に転職してしまった方が早いです。
転職さえしてしまえば、パワハラをしている人から物理的に離れることになるため、悩みは瞬時に解決するからです。
あなたが生き生きと楽しく働ける職場は必ずあるので、ぜひ転職サイトや転職エージェントをチェックしてみてください。
コメントを残す